守りたい人【完】(番外編完)




「えーっ、もうすぐ着くって、さっき連絡したじゃん」


まだ寒さが残る中、ブルブルと震えながら携帯を耳に押し当てる。

その先から聞こえてくるのは、久しぶりに聞いた母の声。

相変わらず、マイペースでおっとりした性格なのが伺えた。


『あら、本当だわ。来てた』

「も~、だったらタクシーで向かうよ。お参りの時間に間に合わなくなっちゃうでしょ」

『少し遅れたくらい平気よ~。杉原さんね、あ、杉原さんっていうのは今日お経あげてくれる方でね、この前ギックリ腰になったとかで、素早く歩けないみたいなのよ~。可笑しいわよね、ふふふふ』

「へ、へぇ……」

『あ、今ね、お父さんが迎えに行くから。そこで待ってなさいね』


フワフワとした様子で話す母は、私の言葉も聞かずにそのままプツリと電話を切ってしまった。

最上級のマイペースさに呆れつつも、変わってない母の様子に少し安心した。


口元に笑みを浮かべて溜息を吐き、携帯をポケットに捻じ込みながら辺りを伺う。

それでも、無人駅の小さなここには、人っ子一人いなかった。

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