クールな御曹司の契約妻になりました


□□□

3月下旬。

契約があると聞かされ、私は指定された都内のファミレスに来ていた。

ランチを過ぎた時間帯。

リクルートスーツに身を包んだ私は、周囲から浮いているように思えてなんだか落ち着かない。



目の前には、二階堂社長の秘書の男性が私とは正反対に落ち着いた様子で座っている。

渡された名刺には、『社長秘書兼秘書室長  成松 慎太郎』と書いてある。



銀縁の眼鏡が整った顔立ちによく似合う知的な印象の成松さんには、見覚えがある。


たしか、私が二階堂グループの就職試験で面接の時に、一番端に座っていた男性だ。

風邪をひいて最悪のコンディションの私が、ガラガラ声で喋るたびに他の面接官は笑いを必死に堪えていたというのに、一人だけ表情一つ変えずにいたのが、一番端に座っていた成松さんだった。

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