クールな御曹司の契約妻になりました
その瞬間、私は痛みがあることだって、自分が車いすに座っていたことだって忘れて、千裕さんに飛びついて、抱きしめた。

千裕さんに飛びつくと、千裕さんが私を力強く抱きしめてくれた。
右手をけがしているから左手だけで抱きしめているはずなのに、その力は痛みを覚えるほど。

「千裕さん、よかったぁ」
「香穂、よかった」


思わず口をついた言葉がシンクロする。


昨日あんなに泣いたのに、朝からメイクだってしてきたのに鼻の奥がツンとして、涙がダムが決壊したみたいに流れ出した。


「香穂が生きていてくれて、よかった」

千裕さんが安堵のため息を吐きながら、漏らすように呟いた一言が心の奥にしみこんでいった。



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