クールな御曹司の契約妻になりました
コン、コン。
千裕さんとの別れを自分自身に言い聞かせた時、ドアをノックする音が聞こえる。
相手はもちろん、千裕さん。
私の返事なんて聞くこともせずに千裕さんはゆっくりとドアを開く。
真っ暗な部屋に、廊下のオレンジ色の灯りが差し込んでくる。
灯りを背に千裕さんが先ほどの困った顔をさらに困らせているのが伺える。
「香穂、少し話をしようか」
千裕さんの声は穏やかで、優しい。
ようやく止まった涙も、押し殺した『好き』という気持ちも、一気に溢れてきそうになるのをグッと堪える。
「はい」
どうにか声にした声で返事をすると、千裕さんはホッと肩を撫でおろし、ゆっくりと私に近づいて私の届く位置に腰を下ろす。