クールな御曹司の契約妻になりました
頬を膨らました私に気が付いた教授は、急に慌てた様子で視線を反らす。

「それは、その……。なんというか……。世話好きで、他人に大きなミスがあってもさりげなく励ますことが出来る橘さんへの誉め言葉だったというか……、橘さんはどちらかというと営業職が向いている気がするが……」


も、もしかして、あの時の言葉に深い意味はなかったってこと⁈

憧れの教授の言葉を鵜呑みにして、秘書を目指していた私って一体……。



「教授ぅ、責任取ってくださいよぉ!!」


もごもごと喋っている教授を一喝するかのように私が泣きべそをかきながらそう言ったのは本気なんかじゃなかったんだ。


お先真っ暗な私が、その瞬間に八つ当たり出来る相手は私の目の前にいた教授だけだったから、ただそれだけだったんだ―――。



だけど、それが全ての始まりだったってことは、その時は全く予想もしていなかった。

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