クールな御曹司の契約妻になりました
「向こうで理事が呼んでる。挨拶に行こう」

耳元で囁かれて私は頷く。

挨拶だって、私にとっては業務の1つ。

「奈々未さん、私行かなくちゃ。ごめんなさい」

「ううん。香穂ちゃん、じゃなくて奥様。失礼します」


にっこりと穏やかに微笑まれて、私が小さく右手で手を振ると奈々未さんも小さく手を振り返してくれる。


「ほら、行こう」

千裕さんが私の腰に手を回す。

パーティー会場の隅っこだというのに、千裕さんがいるとそこが中央であるかのように周囲の視線が集まってくる。


さっきまで私のことなんて見てもいなかった女性たちが私に嫉妬や羨望の眼差しを向ける。


笑顔、笑顔。

折れそうになる心にそう言い聞かせながら、私は千裕さんと一緒にパーティー会場の中央へと歩いて行った。
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