闇を抱える蝶と光輝く龍
気持ちを引き締めて直したら


ギィ…


ドアの開く音がした


振り返ると


桐「…結衣」


私の名前を静かに呼びながら入ってきた


なんか久しぶりに名前呼ばれた気がする


「桐人、待ってたよ」


なるべくいつも通りに話したつもり


怪しまれてないかな


桐「あぁ。ごめん。待たせて」


桐人は前とは違い目を合わせてくれた


桐「それで、話したいことってなんだ?」


ここで怖じ気づいちゃダメだ


ちゃんと言わなきゃ


みんなが背中押してくれたんだから


私は深呼吸してから言葉を発した


「私…桐人が好き!」


思ったより大きい声で言ってしまい自分でも少し驚いた


桐「……え、は?」


桐人も驚いたみたいで目を見開いていた


「あの日のあの言葉は桐人にたいしてじゃなくて私にたいして言った言葉なの。むしろ桐人のことは大好きだよ。あの日は、桐人には他に大切な人がいるから諦めようとしてたの。でも、声聞いただけで決意が揺らいで、桐人の事を信じれてない自分が嫌でそんな自分が嫌いだって意味だったの。私は誰よりも桐人が好きなの。だから―」


桐「ちょっと待て」


最後まで言い終わらない内に桐人に遮られた


もう少しで言い終われたのに…


桐「俺の大切な人って誰の事?」


「え?」


桐「さっき、俺には他に大切な人がいるって言ってたけど、誰の事?それとも誰かに何か言われた?」


「…晴が暴れた日の夜、なかなか眠れなくて休憩室にある自動販売機で飲み物買ったときに桐人の声が聞こえてその時にしほって子と話してるの聞いて」


桐「しほ?…あぁ。あの電話か。でもそれだけで?」


「だって、結構不安とか大切に決まってるとか言ってたから彼女だと思って」


そう言うと桐人は私の肩をつかんで私と視線を合わせた


桐「結衣、俺に彼女はいない。志帆は俺の義理の妹だ」


「い、妹?」


桐「そう。身体が弱いからずっと入退院繰り返してるんだ。で、志帆が“せめて通院だけで済むくらいまで元気になりたい”って言うからそのためには手術や検査が必要だから長期入院することになったんだ」


そんなことがあったんだ


桐「あの時は志帆が急変したって母さんからメールがあったから電話してたんだ」


「じゃあ、結構不安とか大切に決まってるとかの言葉は」


桐「不安は入院中に何かあったらって心配で不安だってこと。大切は家族として大切ってこと。義理だけど家族に変わりはないし志帆も俺の事、兄として慕ってくれてたしな」
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