甘い脅迫生活

「ここは、大切な場所です。うちの会社になくてはならない。だからこそ、改善できる場所は改善してほしい。」



社長から見れば、私たち下の方の従業員なんて、取るに足らない存在なのだと思う。それなのにこの人は、格下の従業員まで大切に思っている。


変わった社長というのとは違うと思った。これがきっと、理想の社長ってやつなのかもしれない。


私が今感じているように、周りの人たちも同じく感じていることだろう。


良い社長だな。ここに勤めていてよかった、と。




「正直ここは解決しなければならない問題が多い。それは他よりもより多い、という意味です。」


緩く続けてきた結果なのだと思うとここの従業員として恥ずかしい限りだ。


「それでも、それが解決できれば、ここはもっと良い場所になる。」


正直、私の優雨を見る目が変わってしまった。配送部なんて社長から見れば底辺も底辺なのに。そこにまできちんと目を配っている。


夜遅くに帰ってきて、朝早くに出かけていく。そして家に帰れない日もある優雨の日常を知っているだけに、きっとここの誰よりも頑張っているこの人が一番、この配送部のことを思ってくれているのだと思った。


かっこいいなぁ。この人が、私の旦那様。



「頑張ってください。私の妻の為にも。」


今なら、優雨を見てキャーキャー言ってる人たちの気持ちが分かる気がするな。