甘い脅迫生活
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「初めまして。美織の父親の脇坂和樹(わきさかかずき)です。そして妻の美玖(みく)です。」
「初めまして。不束な娘ですが、どうぞよろしくお願いいたします。」
「「……。」」
頭を下げた私たち親子を座ったまま見つめ返しているのは、優雨のおじさん夫婦。
優雨のプロフィールを見て知ったことだけど、優雨には両親がいない。小さな頃に病気で2人ともを亡くしていた。
両親を失った優雨の後見人となったのは、優雨のお父様の兄にあたるこの西園寺虎雄(さいおんじとらお)。嘘みたいな名前だなというツッコミはなしにしてこの人、こう見えて前社長だったりする。
態度からいってあまり良い人とは思えない。さすが優雨のおじさんなだけあって顔はいいんだけど……ナイスミドルなんだけど……残念。
こういう態度を見ているとそもそも優雨が社長になった時に流れた噂の、”前社長との確執の上、優雨が勝利して失脚に追い詰めた。”という噂もあながち間違いじゃないんじゃないかと思ってしまう。
私たち親子を見るおじさんたちの視線は夫婦揃って、良いものとはお世辞にも言えない。
そして仮にも、西園寺グループのトップに立っている人間がこの無礼な所業。完全に下に見られていると見て間違いないだろう。
チラリと、お母さんを見た。綺麗に笑顔でおじさんを見ているけど、これは確実に怒っているなと娘の私には分かる。
目が笑ってないよ。知り合いだったら礼儀がなってないって跳び蹴りされてるよ。
お母さんの最近の趣味、知ってるかい?プロレス観戦だよ。暴力苦手なお父さんが付き合わされて毎回青白い顔して帰ってくるよ。
さすがにこの人にはしないだろうけど。確信が持てないだけにハラハラしてしまう。