甘い脅迫生活
「私は欠陥品なんだと思いました。でもそれも便利だと思いました。」
私の話をただ聞いてくれているおじさんは、本当に誘拐犯らしくないと思った。それに、話があまりにも衝撃的なせいか、おじさんはまるでおとぎ話を聞いている子供のようにコロコロと顔色を変える。
ほら今も、不思議そうな顔をしている。
「今職場で些細ないじめに遭っているんです。暴言を吐かれたり、ちょっとした時に嫌がらせをされたり、ロッカーを荒らされたりとかですけど。」
そして今は、不快そうに眉間に皺を寄せていた。
この間、書類の間違いを指摘した時から、配送部の人たちから嫌がらせをされるようになっていた。
トイレで肩をぶつけてきたり、ロッカーの取っ手に何かのジェルを塗られたりとか、とても些細な話なんだけど。
「でも、そういうのも怖くなければなにも感じませんね。ちょっとめんどくさいけど。」
熱に浮かされた頭で、彼女たちの表情を想像した。それは酷く歪んで見えて、まるで鬼のような形相で。想像するだけで笑えてしまう。
私が誘拐されたのは、小学校低学年くらいだった。その頃にはもううちの会社はほぼ倒産寸前で、私にもし身代金がかかっていれば今の借金はもっと膨らんでいただろう。
間もなく、うちの会社は倒産。親は借金を抱えた。