甘い脅迫生活




そこまで考えてハッと気が付いた。


私はいずれ傷つくほどこの人を好きになってしまうというんだろうか?出会って数日で傷つきたくない、そう思うほど、もうこの人に惹かれているのだろうか。


社長の攻撃は滅茶苦茶で不器用なように見えて実は、確実に私の心に攻め入っているのかもしれない。


脅迫なんてしてきたくせに、私とこうして向き合おうとしてくる。


婚姻届けを2人できちんと出しに行って、同じ指輪を堂々と付けてくれる。そしてこうして、仕事が終われば真っ先に帰ってくる。脅迫や私たちの関係、それを見ないようにすれば、社長の行動はとても誠実で、まるでそこに心があるかのように見えた。


だからといって騙されちゃだめなんだ、けど。


「すいません。変なこと聞いて。」


こうして拗ねてみせている可愛いところには正直、弱い。


頭を下げれば、社長の大きな手が頭をそっと撫でた。


大きな手。男らしい手だ。それなのに、頭の撫で方はなんだかぎこちなくて。


凄く、可愛い人だと思った。



「前向きに見てくれないか。」

「え?」


社長の声に顔を上げれば、困ったように笑う社長が私をまっすぐに見つめていた。



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