暴走族の姫 Ⅰ
優喜side









「ん…。」
















悠が入院して46日目の夜、俺は生まれて他人の事で初めて泣いた。

















気が緩んだのもあるし、やっぱり愛してるんだと思う。















悠のことを。
















〔そうだ。悠が目を覚ました。あぁ、明日から面会できるそうだ。〕
















本当に…。本当に。良かった。

















「ゅ、き…。」
















喋るのも辛いと思うのに…。


















目線をこちらに向けて、俺の名前を呼ぶ愛しいひと。

















「辛いだろ?喋んな。俺ならここにいるから。もう絶対離さねぇ…。」

















「ら、んは?」
















喋るなって言うのに、悠は蘭の心配に引き続き、色々聞いてきた。
















全く、本当に好きだ。

















「蘭は今精神が参いってて、幼児退行してるけど、その方が今は蘭も楽なんだと思う。




それで沙羅がずっと付き添ってる。




今、蘭は寝てるから明日来るっていってたぞ。




あと倉庫のやつらもすげぇ心配してるみたいだぞ。




悠のこと。」

















そう伝えると、悠の瞳から零れ落ちる涙が…。


















俺は涙の原因が分からず、悠の涙が収まるまでずっと頭を撫でるしかなかった。
















「ご、ごめんなさい。スズッさっきいってくれた言葉に安心しちゃって…。」
















そうだ。俺だけじゃない。悠の方がずっと緊張状態にあったんだ。
















ごめんな。気づいてやれなくて。
















「安心したら眠くなっちゃった…。優喜、一緒に寝よう?」
















あぁ、寝る。
















「ほらっ、ちゃ、んと、お布団、入って…。ッッ」
















このとき安心して眠くなった俺は、悠の異変に気づいていなかった。
















「あーぁ。も、グスッな、んでかみ、さまはこんな、いじわ、グスッるなん、だろう。」














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