君が好きなんて一生言わない。
考え事をしているうちに時間は流れていき、やがて昼休みを告げるチャイムが鳴り響いた。


「今日も椎先輩のところに行くんでしょう?」


いつの間にか習慣になっていたこの質問に、私は黙り込んだ。

いつもなら即答するところだけど、今日はできなかった。

紗由が椎先輩のことを好きだということを知ってしまったのに、椎先輩とふたりっきりになるあの空き教室に行くことはできない。

何も言わずに俯く私を見て、流石に何かあったのだと気づいた紗由は「どうしたの?」と心配そうな顔で問いかける。


「即答しないなんて珍しい。いつも行っていたじゃない」


「先輩と何かあった?」と尋ねる紗由に、私は首を横に振る。


違うんだ、決して先輩のせいではなくて、これは自分の問題だから。

けれどそれすら言えない私を見て、紗由は溜息を吐くと私の腕を掴んだ。


「え?」


驚いた顔をする私に、紗由は笑った。


「ちょっと、来て」


紗由が私の腕を掴んで教室を出る。

連れてきたのは、人気のない渡り廊下。

人が全くいないのを確認した紗由は「ここまでくればいいか」と言って私の腕を離す。


「さ、何があったのか話して。麗が黙る時は絶対に何かあったときだって分かってるんだからね」




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