彼の嘘 彼の本音

事件

藤真君の家に泊まった次の日。


いないだろうと思いながらも父親に出会したくはなかったあたしは、藤真君に鍵を貰いに行くといい、駅で別れた。


家に帰れば、父親はもういなくて、もともと忙しい人だったと思い直した。


ホッとして、息を吐き出す。


荒れた部屋を見て、藤真君の家のあの温かい家を思い出す。


いつも、外から帰れば甘い手作りのおやつの匂いや夕ご飯の匂いがした。

お昼寝をすれば、必ず上掛けをかけてくれる。

暖かい、太陽の匂いがするタオルケットやお布団。

たまには二人で買い物した。

夕飯の買い物だったり、服を見に行ったり。


いつも、お母さんがいてくれた。



今はない、温かい家庭の匂い。

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