彼の嘘 彼の本音

別れの時

大樹先輩の部屋で、暖かい紅茶をいれて貰って、

少しずつ落ち着いてきた。



話をした。

放課後、男達に襲われそうになったこと。

父親に殴られて逃げ出してきたこと。


大樹先輩は、黙って聞いていてくれた。



話し終えて、大樹先輩の顔を見れば、

優しい顔が、泣きそうに歪められていた。

先輩がそんな顔する必要ないのに。



「…夢。」

「…ん。」

「…どうしたい?」

「…、」

「このまま、黙ってられないだろ。」

「…。」

「男達の事もだけど、…親父さん、俺は、夢にもう一緒にいて欲しくないと思うよ。」

「…。」

「夢はどうしたい?」


どうしたい…。


「…帰る、家がなくなるのは、困る。」

「ん。」

「頼れる大人なんて、いないし。」

「…ん。」

「でも、…もう、あの人を、お父さんとは呼べない。」

「…うん。」

「高校やめて、働いてでも、…あの人といたくない。」

「…うん。…よし、だったら、考えよう。」

「え?」

「夢がこれからどうすればいいか、考えよう。
俺も一緒に考えるから。」

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