バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 その食い入るような視線に思わず怯んでいると、赤ちゃんが「あ~、あうぅ」と稚い口調でおしゃべりしながら、私に向かって両手を伸ばしてきた。

 これは私に、抱っこをしろと言っているのかな?

 実はこれまで赤ちゃんと接する機会がほとんどなかったから、幼い仕草や口調がいちいち珍しくて、まじまじと眺めてしまう。

「こら、優花(ゆうか)。だめよ」

 お母さんに叱られても、優花ちゃんは赤ちゃん特有の言葉をしゃべりながら、熱心に私に抱っこを要求してくる。

 まるで、日本語と中国語とフランス語を混ぜ合わせたようなその絶妙な言語に、つい笑ってしまった。

「優花ちゃん、かわいいですね」

 自然と口から出た自分の言葉に、自分でちょっと驚いた。

 私が、素直にこの子をかわいいと思うなんて。

 私が貴明との結婚を諦めざるを得なかった一番の原因である、この子を……。
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