バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「自分じゃ気がついていないかもしれないが、お前、以前に比べたらちゃんと接客がうまくなってきてる」

 副社長が優しい笑顔で、手に持った紙で私の頭をまたポンポンする。

 それがなんだか副社長に頭を撫でられているような気がして、私の心はほっこりした。

 彼は仕事に関しては一切隙がなくて、どんな小さなミスも見逃さずにきっちり指摘してくるけれど、その後で必ず良い所を見つけて褒めてくれる。

 それが『お前の頑張りはちゃんと見てるぞ』って言われてる気がして、よし、次に生かそうって前向きな気持ちにさせてくれるんだ。

「さあ、そろそろゲストハウスへ向かうぞ。アンケート用紙は俺のデスクに置いといてくれ」

「はい」

 用紙を奥のデスクの上に置いて振り向くと、そこにもう副社長の姿はなかった。

 あれ? 副社長?

「おーい。グズグズするなー」

 声はすれども姿は見えず。どうやら彼は私を置き去りにして先に行ってしまっているらしい。

「早く来ないと置いていくぞ。お前、ゲストハウスまで走る気か?」

 そんな意地悪な声が聞こえてきて、私は慌てて叫んだ。

「そんなの嫌です! 待って下さい!」
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