目は口ほどにものをいう


定時後、一度家に帰って着替える。
もちろん、まほさんにもらった香水もつけて。
甘すぎず上品な香りは、私を引き立ててくれる気がした。


司さんが連れてきてくれたのは、ホテルのレストラン。
「こちらへどうぞ。」
ウェイターに案内された先は、窓から都会の夜景が見える個室だった。

「わぁ、きれい。司さん。連れて来てくれてありがとうございます。」
「どういたしまして。」
司さんがうれしそうに微笑む。

「ゆかり。プレゼント。その服に似合うと思う。」
食事が運ばれて来る前に、そう言って渡されたのはお花がモチーフのペンダントだった。
「かわいいっ。今、着けてもいいですか?」
「どうぞ。着けてあげるよ。」
私の後ろに回りペンダントを着けてくれる。首筋に触れる手がくすぐったい。気恥ずかしくて思わず身を竦める。
「どうかした?」
「いえ。ちょっと恥ずかしいなって。」

ふと、司さんの動きが止まる。

「どうしました?」
司さんを振り返ろうとした瞬間、項にちりっとした痛みが走る。
「司さん!!!」
「大丈夫。誰も見てないよ。」
そうじゃなくて!!
睨む私に
「ごめん。いい香りがするから誘ってるのかと。」
…'ごめん'なんてこれっぽっちも思ってない。
私が動揺するのを楽しんでる。

司さんをにらみ続けてみるけれど。
「どうかした?」
そんなに愛しそうに微笑まれたら、私はなにも言えなくて……わかっててやってる司さんはほんとにずるい。
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