颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
佐藤課長と部署巡りをして、資料のスキャニングとコピーで1日が終わった。未だ紙の資料は必要らしい。本社にきてもやることは大して変わらなさそうだ。

それはいいんだけど。これから、気が重い。

オフィスを出て、駅前のカフェに向かう。通信システム開発とそれに伴う家電を作る会社としては最大手のイエロードット電子株式会社の御曹司なら、ロールスロイスとかリムジンとかでお抱え運転手付きで通勤してるのかと思ったけど、そんなところで待ち合わせって意外と庶民的だ。

リムジンが無理なら普通にボルボとかBMWでもいいのに。偉そうにしてて、意外とセコい。

えっと、はむはむカフェってどこだろう。
あたりは細長いビルだらけ。看板もありすぎて目が滑る。東京ってほんとに詰め込まれた街だ。

スマホで検索。位置情報を見る。ダメだ。ビルが邪魔でGPSが狂ってる。
待たせたら、キミ、バカ?、って言われそう。そしたらリムジンで迎えにこないボンボンが悪いって返してやる。


「なにニヤケてるの、キミ」


振り返ると桐生颯悟が立っていた。しかも目を細めた呆れ顔。私に対するデフォ。


「いえ。別に」
「オレ、はむはむカフェって伝えたよね?」
「はい」
「なんで通り過ぎてるの? ほらそこ」
「えっ?」
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