颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「た、食べますっ! この麦倉みのり、全力で頂きますっ!!」
「だよねー。庶民のキミは一生待っててもありつけないよね。さあ食べよっか」


重箱のふたを開けると色とりどりのおかずが詰まっていた。黄色い玉子焼、色とりどりの煮物、こんがり焼けた鰆、ローストビーフ、スモークサーモンのサラダ。どれも飾り付けが凝っていて、まるで絵画のよう。食べるのがもったいない。

秘書ってこんなおこぼれをもらえたりするんだ。


「秘書課のみなさんって、こんなお弁当をいただけたりするんですね」
「キミ、異動希望アンケートに秘書課って書こうと考えたでしょ?」


ううっ。お見通しだった。
桐生颯悟はあきれ顔だった。


「一日のメール対応100件、内線を含めて電話応対50件、来客応対も3、4件。そのほかにボスのスケジュール管理、会議や出張の手配、買い出し。突発的な対応もあって日に何度も社内外との調整も必要だし。即座に判断して柔軟かつ的確な対応が求められるポジション。キミにそんな能力あるの?」
「米粒ほどのかけらもございません」


私には無理だ。
秘書ってキレイなら誰でもなれると思っていた。
相当な切れ者なんだろうなあと考えながら箸を手にする。


「ところで秘書さんっていつもどこにいるんですか?」
「8人のうち7人は秘書室に、ひとりは社長室に常駐。入ってすぐ左手にガラス張りの部屋があったでしょ、会議室といっしょに。社長秘書がオレのスケジュール管理もしてる。父に代わって出る会合も多いからね」
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