颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
ユウキくんはパネルの前でしばらく動かなかった。初めて見るいかがわしい部屋たちに呆然としていたに違いない。引き返すなら今だ、早百合さんは、帰ろ?、と呟いた。

それが引き金になったのか、ユウキくんは目の前にあったボタンを押し、早百合さんの手をさらにぎゅっと握ってうつむいた。ユウキくんの白い肌は赤く染まっていた。


『初めてだけど、僕、本気だから。早百合さんのことホントに好きだから。だから、いい? ダメって言われても引き返せない』
『……わかった。わかったから』


高校生のピュアでまっすぐな告白に心を打たれたのもある。もちろんユウキくんを欲しかった自分もいる。早百合さんは意を決して彼の手を握り返した。そしてパネルの裏側に回り、通路のランプに誘導され、部屋に入る。

扉が閉まる前から始まる深いキス。背中に回されるユウキくんの手。ぎこちない手で早百合さんの服を剥ぎ取り、おっかなびっくりにキスを落としていく。

このひとの、髪の一本一本を。
このひとの、肌の細胞ひとつひとつを。
吐く息のすべてを。その瞳で見るものすべてを。

このひとのすべてがほしい。
そう思いながら早百合さんはユウキくんの背中にしがみついた。

好き、好き。かわいい。大好き。
そんな言葉では表しきれないなにか。

エアコンが効いているはずの室内で、こめかみに汗を浮かべながら自分の上で揺れ続けるユウキくんを見て思った。


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