颯悟さんっ、キスの時間です。（年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも？）

いや、でも、ここで頑張って祐理恵さんとの婚約を解消しなくては桐生颯悟の未来はない。

早百合さんが元カレのユウキさんに思いを残している以上、ユウキさんに会いに行く前しか桐生颯悟にチャンスはないのだ。焼け木杭に火がつく前に。早百合さんと再会したユウキさんがやり直したいなんて言い出したら、桐生颯悟に入り込む余地はないのだから。


「さ、あなたの番よ。さっさと作りなさいよっ！」
「はいはい」


クリームコロッケの中身を冷まして寝かせる間、私がキッチンを占領する番になった。その間、桐生颯悟と祐理恵さんとばあやさんはリビングのソファでお茶をする。ああ、あれ、こないだテレビでやっていた銀座のティールームの焼き菓子と紅茶だ。１００グラム１万円もするダージリンセカンドフラッシュとフランス直輸入のマカロンとガレット。シャンパンの芳香に似たダージリンの香りがこっちにまで届いた。

小指を立ててティーカップを持つ祐理恵さん、マカロンを皿の上で半分に割ってから口に放り込む桐生颯悟、そっと紅茶を注ぎ足すばあやさん。

セレブのお茶会って、あんな感じ？
ああ、私も食べたかった。


＊―＊―＊

果たして、１時間後。
さっきまでセレブのティーパーティに占領されていたローテーブルにはコロッケが並んだ。