颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
桐生颯悟が早百合さんを抱く姿を想像してしまう。ぶんぶん、と心の中で頭を振る。一緒にいたら、いつもそんなことを想像してしまいそうだ。好きなひとと同じ空間にいる幸せと、酷さがぐるぐると混ざる。

この先、どうするんだろう。桐生颯悟にはコロッケ対決までは頼まれている。
本来なら、片道2時間通勤のマンションに撤収だけれども。


「決着、着きませんでしたね」
「そうだね」


桐生颯悟はチラリと私を見て、床に視線をもどした。
なにやら言いにくそうだ。バツが悪いとき、恥ずかしいとき、桐生颯悟は目をそらしてつぶやく。


「みのり。もう少し一緒にいてくれる? コロッケで終わると思ったんだけど、あきらめてくれそうにないし。英会話対決が終わるまでいい? 同棲生活」
「颯悟さんこそ、いいんですか? こんな私を住まわせておいて」
「うん。みのりがいるとほっとするし。ホントにいい?」
「だって祐理恵さんとの婚約を解消させるまでが私のミッションだと思ってますから。颯悟さんさえいいなら私は……」
「……ありがと。じゃあ荷物、追加で持ってこないと間に合わないよね? 買えるものは買ってあげる。それくらいしかお礼できないし」


お礼なんていらない。こんなタワーマンションの高層階に泊めてもらって、服も買ってもらって、バーにも連れてってもらって楽しかったし経験になったし、それでいい。桐生颯悟を好きになって、心も潤ったし……まあ、それは片想いだけど。
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