きっと、君だけ。



「……それは……」



喉が詰まるように、言葉がうまく出てこなくなる。



初めて私が好きになった人。


でも、その人の前で私はちゃんと笑えていたのかもわからない。



もう思い出せない程遠い過去の記憶に、想いを馳せる。



その人の顔を思い出そうとして、チクリと頭の中に痛みが走る。



「ムカつく」



ハッと、彼の言葉で我に帰った。



「え?」



「否定しないってことは、肯定と同じだし。まじムカつく。そいつぶん殴りたい」



今までの優しげな雰囲気はどこへやら、急に物騒な言葉まで使ってる尾崎くんに、目を見開く。


でも、紡ぐ言葉とは裏腹にその瞳は寂しそうだった。



「な、何を言って……」



「藤咲さんの心ん中、俺でいっぱいにしたい」



──ドキッ。



……い、いや。なにこれ、おかしい。


ここでときめくのは、絶対におかしい。



「藤咲さんのこと、めちゃくちゃ欲しい」



ああ、なんて甘い声で私を求めるの。


そんな君の願いに応えることなんてできないのに。



< 24 / 50 >

この作品をシェア

pagetop