きっと、君だけ。



頭痛を無視するように、気だるい体を無理矢理起こして自分の部屋から出た。



家具は一通り揃ってるし、殺風景ではないけれど静かで味気のない家。


どうせ私以外、誰もいないのに無駄に広い。



お母さんはお父さんがいなくなってから、女手ひとつで私を育てるのが大変だからか、最近は仕事に引っ張りだこ。


残業や夜勤もあるから、家にいる時間の方が少なくなった。


時々、本業以外に単発のバイトもしているような気がする。


本当のところは聞いたことがないからわからないけど、それ以来滅多に顔を合わすことがなくなった。


そんなに働き詰めで、母親の体調が心配でないわけでない。


でも、いてくれない方が私としてはありがたかった。



離婚した原因である私のことを、お母さんが毛嫌いしていることは知っている。


だからあまりお母さんの前に姿を現したくなかった。



どうせ誰もいないのに行ってきますと言っても意味がない。


この家で私が口を開くこともなければ、挨拶が交わされることもない。



閑散としているこの家から、雨が降り注ぐ外へと出て、いつものように学校へ向かった。



すっかり桜も散り、緑が生い茂る季節。


あっという間にやってきた、梅雨の時期。



雨はしばらく続きそうだ。



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