嘘だらけの秘密


家の前の道、道なりに歩いとって、拾うから。


そう言われたから、ひたすらにぼんやり歩いた。

幸いなことに比較的あたたかい日やったから、頭を冷やして考え事をするんに丁度うってつけな気候やった。


わたしの家からの最寄りのマクドは、自転車やったら15分程度のとこやけど、車なら5分もかからんと思われた。

仕事しよったやろうし、食べたゴミとか片付けして、店出て、15分くらい?


それにしても、大変なことになってしまったな。やけどもうあとには引き返せへん。
家を出てきて、戸波さんを呼んだということは、
婚約者か戸波さんかの選択で戸波さんを選んだ、あるいは婚約者を無意識的に切り捨てたということなのだと思い知った。



このまま戸波さんが来なかったら、どうしよう。

話し合いしてきたこと話して、わたしが戸波さんに依存すると思われて、怯えて去られたら。

わたしは婚約者に泣いて縋るんやろうか。




そんなことを考えて歩いていたら、ゆうに30分近くも歩き続け、マクドの近くに出た。

戸波さんからの着信。


拾い損ねてもーたわ。この道難しいわ。マクド戻るから来て。


マクドに着き、車に乗ると、相変わらず難しい顔の戸波さんがいた。



どーやったん?




わたしは一部始終を話した。


戸波さんはなんとも言えない顔をしてから、少し唸って、車を出した。




気分転換にどっか行こか。今更やけど。




はい。




そうは言ったものの、当初予定しとった雑貨屋さんやらカフェやらに行く気にもなれんと、二人して黙ったまま街をぐるぐるした。


30分くらいして、戸波さんがこう呟いた。



やっぱせっかくやし、ホテル行かへん?

ぎゅってしたいねん。雑念やばいから上手くいくかわからんけど。




わたしはなにも答えず頷いた。



車は郊外のラブホ街へと向かって行った。
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