不思議探偵アリス ~切り裂きジャックと赤の女王 ~

私たちは白ウサギと別れ、事件が起こっているという街へと向かっていた。

しかしさっきからレオンは事件の詳細が書かれた紙をずっと読んでいる。

「そういえば、レオンはなんで切り裂きジャックのこと知ってたの?」

気まずくなってきたのでレオンに話かけた。

しかしレオンは何もこたえない。

なんなのよ.......

「これ読んどけ」

と彼は紙を乱暴に手渡した。

手渡された資料は本のようになっていた。

こんな乱暴に渡さなくたっていいじゃないの!

「わかったわよ」

まったくもっと優しく渡せないわけ?

優しく話しかけてあげたって言うのに......

あ、だめだ!

こんなことでイライラしてちゃ1週間ももたない

「ふう」

深呼吸をして自分を落ち着かせる。

よしっ!

そうして私は紙に目を通した。

「何々、切り裂きジャック事件について......

1888年8月31日未明。

出勤途中のトラック運転手がホワイトチャペルのバックス通りで地面に横たわっている少女を発見。

その少女は喉を切り裂かれ、腸が飛び出していた。

性器にも刺し傷があった。

犠牲者の名はメアリ・アン・ニコルズ、17歳。

近くの学校に通う学生であった。

殺害されたのは午前1時頃だと推定される。

その後、同様の犯行で同じ学校に通う女子学生が2名死亡......」

私は事件の内容に驚愕した。

まさか、自分と同い年の子たちがこんなにも酷い殺され方をされている事件だなんて......

私、こんな事件解決できるの?

「どうした」

とレオンの声がした。

「え?」

見るとレオンは不機嫌そうな顔をして私を見ていた。

「え?じゃねえよ、お前が立ち止まったんだろ」

立ち止まる?

あ......

私は不安のあまり立ち止まっていたのだ。

うまく足が動いてくれない。

「ごめん。この事件が.......」

なんて言えばいいかわからなくなった。

怖いのか、犯人を見つけることができるか不安なのか

私が言葉に迷っていると

「自分と同い年の奴らが殺されておじけづいた、と」

レオンは冷たく言った。

「ち、ちがう!」

「じゃあなんだ」

「っ......」

なんて返せばいいのかわからない。

ただ.......

「怖い」

いつのまにか本当の気持ちが言葉に出ていた。

口に出してわかった本当の自分の気持ち。

「そうか」

レオンはそう言うと腰に下がっている剣を抜き、私に向けた。

え、き、斬られる!

思わず私は身構える。

「ほんとバカなのな、お前」

「い、いきなりなんなのよ!」

本当に斬られるかと思った。

だって彼の目があまりにも真剣で、鋭かったから.......

「この剣はお前を守るようにって渡されたんだ」

と彼は剣を下ろした。

「渡されたって誰に?」

「誰でもいいだろ、とにかくお前は俺が守ってやる」

この人、こんなにかっこいいことが言えるのか。

そう思った。

だって口を開けばきつい言葉ばかりだったから。

「レオン.......」

「だからめそめそしてないでさっさと行くぞ」

とレオンは剣を戻して何事もなかったかのようにスタスタと歩き出した。

彼の言葉で少し気持ちも軽くなった気がした。

初めて頼もしいと思えた。

ちょっと見直した。

でも......やっぱりその命令口調はほんとムカつく!


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