ガラスの境界、丘の向こう
 ウィストウハウス・スクールの校舎の造りはとても複雑だ。

 三〇〇年前に本館部分が建てられて以来、子孫たちが増築し続け、さらに第二次世界大戦後にお屋敷がヨークシャー州のものになると、今度は学校用に大規模な改築がなされ、教室として使いやすいように部屋は細かく分割された。

 校舎は、眞奈たちが授業を受けている本館と、本館とわたり廊下でつながっている別館がある。
 それぞれ一階、二階、三階、屋上、その他中二階、中三階もあり、部屋の数は大小併せると一五〇とも二〇〇ともいわれている。

 昔はあまり精巧な図面がなかったのか、単なるいいかげんだったのか、度重なる増改築の影響で、部屋のつながりにまったく脈絡がない。

 廊下からすべての部屋に行けるわけではなく、階段の踊り場から続いている部屋があったり、部屋の向こうにまた部屋があって別棟の廊下に続いていたり、部屋に小さい個室がいくつも付属していたり……。

 さらに学校に改築したときに、火事になった場合の延焼防止用なのだろう、廊下のあちこちに防火扉が設置してあった。

 防火扉といっても簡易的なもので小窓から一応先は見えるのだが、行く手をさえぎる多くのドアはやはり心理的に焦らせる。

 ウィストウハウスはまさに抜け出せない迷宮だった。

 
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