浮気の定理-Answer-
自分は明日のシフトが昼からだからなんてことないが、確かに朝早い主婦にはあまり飲みすぎるのも辛いかもしれない。


「じゃあ、あまり遅くなれないですね?

時間、大丈夫ですか?」


「今日は主人に預けてきたので、少しくらいなら遅くなっても大丈夫です」


主人という言葉にドキッとした。


目の前にいる彼女はまだ若くて綺麗で、僕と同年代の、普通の女性に見える。


お子さんがいて、お母さんだってことは理解していたのに、誰かの奥さんだってことは頭になかった。


彼女も人妻なんだなぁ……なんて、ぼんやり思う。


「ご主人が見てくれてるなら安心ですね?」


何気なくそう言った僕の言葉に、一瞬寂しそうに瞳を揺らしたような気がしたのは気のせいだろうか?


次の瞬間にはもう彼女は普通に戻っていて、そうですね?と静かに微笑んだ。


家庭のことを聞かれるのはあまり好きじゃないんだろうか?


そのあと彼女は、まったく別の話を振ってきて、会話は別の方向にずれた。


それはそれで楽しかったけれど、さっきの寂しそうな表情が、なぜか頭に焼き付いて忘れられなかった。
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