浮気の定理-Answer-

そうして僕らは週に何回かLINEのやりとりをするようになった。


彼女の様子から察するに、LINEに時間が割けるのは旦那さんが夜勤の時らしい。


まあ確かに、疚しいことはないとはいえ、自分の目の前で他の男と連絡を取り合っていたら旦那さんだって面白くはないだろう。


彼女自身もいない日の方が、きっと気兼ねなくLINE出来るのかもしれない。


映画の話はもちろん、仕事のことや家庭のこと、いろんな話が清水さんとは出来た。


それが続けば続くほど、楽しくて切り上げるのが難しくなる。


LINEでの会話はこんなにたくさん話しているのに、店ではそんな顔を見せないところにも好感を持った。


変に仲がいいことをアピールしてくるパートさんもいる中で、彼女はきちんとその辺はわきまえている女性だった。


もちろん、こんな風にLINEのやりとりをしたことがあるのは、清水さん以外いなかったけれど……


それでもまだこのときは、友達くらいの感覚で、好感は持っていたものの、恋愛感情ではなかった気がする。


たぶん彼女も、気軽に趣味の話が出来て、忙しい毎日の息抜きくらいには思ってくれてたんじゃないだろうか?


まさかあんなことになるなんて思いもせずに、僕らは小さな秘密の共有を楽しんでいた。


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