浮気の定理-Answer-
「ありさはどうしたい?」




自分の気持ちは決まっていても、それを押し付けることはしたくなかった。


だから聞いてみたのだ。


ありさの気持ちを。




「ほんとは生みたいけど、でも……今は無理だってわかってる」




涙ぐんでお腹を優しく撫でる仕草は、もうすでに情がわいてる証拠かもしれない。




「いいのか?」




「……うん」




「わかった、病院には一緒に行くよ」




「うん、ありがと……」




もし産まない決断をするのなら、出来るだけ早い方がいい。


ありさの休みに合わせて、俺も休みをもらって一緒に病院までついていった。


軽く考えていたわけじゃないけれど、一つの命を断つということは、悲しくて重い。


産みの苦しみは生まれてきた子の顔を見れば一掃されるんだろうが、今回は違う。


産後の体調よりももっと、ありさの体は悲鳴をあげていた。


仕事にも行けずに寝込むことが多くなり、俺は後ろ髪を引かれながら稼ぐために家を空ける。


大丈夫だからと青ざめた顔で力なく笑うありさは、このときどんなことを考えてたんだろう?


それから一ヶ月後――


ありさはパートの仕事をスッパリと辞めた。

< 192 / 350 >

この作品をシェア

pagetop