浮気の定理-Answer-
「ありさ、風呂入れたから」




キッチンで夕飯の支度をするありさに、そう声をかけた。


ありさは手を止めて、わざわざ振り返って俺を見る。




「ありがとう!助かる」




大袈裟なほど喜んで見せるありさも、以前とはだいぶ変わったかもしれない。


後ろめたさがあるのか、最近は笑顔を見せることも多い。


当たり前の毎日が、一番幸せなんだと最近は特に思う。




「洗濯物、畳んでくるよ」




さっきリビングのソファーに取り込んだだけの洗濯物があったことを思い出した。




「え!いいよいいよ!私が後でやるから

和也は疲れてるんだから座ってて?」




背中を押されていつもの定位置に座るよう促される。




「や、でも、暇だし」




そう言っても、ありさは「いいから!」の一点張り。


おかしなもので、なにもやらなかった頃は、洗濯物くらい畳んでよ!とよく叱られたものなのに、進んでやろうとするとこの有り様だ。




「わかったよ、じゃあこいつらと遊ぶか!」




二人の娘を同時に両手で捕らえると、キャーっとはしゃいだ声が上がった。


ありさはその様子を嬉しそうに眺めて、またキッチンへと戻っていった。
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