浮気の定理-Answer-
「あれ?まだ起きてたんだ」



特に俺を疑うこともなく、そのままキッチンへと向かう。


冷蔵庫から麦茶を出してコップに注ぐと、美味しそうにゴクゴクと飲み干した。


カウンターキッチンからはありさの様子は丸見えで、俺の視線に気づいたのかシンクにコップを置いて、笑顔でこっちを見る。



「コーヒー飲む?」



たぶん、まだこの笑顔は本物じゃない。


俺との仲を修復しようと頑張ってる顔だ。


表面上は二人ともが浮気の事実を知らないふりして生活してる。


けれど心の奥底では、お互いにいろんな思いを胸に、この夫婦を家族を成り立たせようと必死だった。


それがいつか、普通になればいいと思う。


お互いを気遣うのが当たり前になって、昔みたいに喧嘩も出来るような夫婦になれたら……



「うん、いいね?飲もうかな?」



笑みを浮かべてそう言えば、ありさもつられたようにまた笑顔になる。


ちょっと待っててね?とコーヒーを淹れ始めるありさを眺めながら、こうしてずっと一緒にいられることを、心から願った。

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