浮気の定理-Answer-
さっきまでの威勢はどこへやら、すっかり借りてきた猫みたいになってる。


何気なく目に入った写真には、幸せそうな家族の姿。


そこから察するに、娘を連れて妻が出ていった……という図が頭に浮かぶ。


さっきの電話からもそれが窺える。


口には出さないけれど、そんな客の裏側を探るのは、仕事柄、癖になってしまっていた。


あんな言い方では、しばらく妻が戻ることはないだろう、とか。


よほど亭主関白だったんだろう、とか。


願わくはもとの鞘に収まって、さっきの写真の中の家族のように戻れたらいいと思う。


それにはこの男性がどこまで妻に歩み寄れるかに、かかっているような気がする。


いつまでも一杯の酒を飲み続けるその客を盗み見ながら、そんなことを考えていた。

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