浮気の定理-Answer-
急に僕が口を挟んだことで、菊地さんは慌てて弁解しながら、レジの方に去っていった。


あの人も余計なこと言わなきゃ、悪い人じゃないんだけど……


菊地さんがいなくなったのを見計らって、僕は彼女を安心させるように口を開いた。


「気にしないでくださいね?

お子さんが具合悪いときは、ちゃんと休んでください

大丈夫ですから」


すると不安そうだった彼女の表情は、ホッとしたように緩んでいく。


良かったと、こっちもホッとしていると、彼女は今度は不思議そうな顔で僕を見てた。


そうだった、彼女に会うのはこれが初めてだ。


店長から履歴書を見せられて、話も聞いていたからこっちは知った気になってたけど、彼女からしてみたら、誰なんだ?と思っても仕方ない。


「あ、はじめまして……ですよね?

ここの副店長をやってます飯島です

清水さんでいいんですよね?

よろしくお願いします」


シフトの関係で、今まで被らなかったから、挨拶もまだだった。


軽く自己紹介すると、副店長という肩書きに驚いたのか、彼女の顔に緊張が走る。

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