白の終わりに願うもの
白の終わりに願うもの




草木も眠る午前2時。

規則的な時計の針が、粉雪の舞う静かな世界に響く頃。街を埋め尽くしたお馴染みのクリスマスソングのような、ありきたりな夜がやってきた。


「良い子は寝る時間だよ」


コンコン、と薄窓を二回叩く音がしたら、私の部屋にもクリスマスがやって来る。年に一度の、聖なる逢瀬がやって来る。断りもなく窓から部屋に入り込んできた彼が、私の目を見て、ふわりとひとつ、微笑んだ。


「どうせ良い子じゃないもの」

「またそんな可愛くないこと言って。良い子にしてなきゃプレゼント貰えないよ」

「そんなものくれたことないでしょ」


この似非サンタ、と付け足せば、ひどい事言うなぁと、またひとつ、彼が笑った。まるで絵本の中のトナカイみたいに真っ赤になった鼻をくすくすと動かしながら、今年も寒いね、なんて呟く彼が、私にそっと手を伸ばす。

また会えたね、と微笑みながら。

サンタクロースの正体がパパだってことを知ったのは、もう随分と昔の話だ。足音を消して、そっとそっと枕元にプレゼントを置く父の気配は、ついさっき私の部屋から出ていった。

赤と白を纏った彼の冷えた指先が、私の頬を撫でたのは、今年で一体何度目だろう。プレゼントを心待ちにする年頃を過ぎても、クリスマスなんてイベントを待ちわびるようになったのはいつからだろう。



「雪、今年は積もったねぇ。去年はほとんど降らなくて、残念そうだったもんね」

「別に。雪でも積もってトナカイが事故起こせばいいと思っただけよ」

「ほんっとに可愛くないよね」

「そっちこそ本当にサンタらしくないのね」


服装だけはそれっぽくても、プレゼントを入れる大きな袋も、顔を覆うようなヒゲもない。あるのはただ、にっこり笑った頬に刻まれる笑窪と、私に触れる冷たい指先。

久しぶりだね、と微笑む声と、またね、と私を置いていく背中だけ。
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