優しい雨 ~一年後の再会~
「はい、そこ、いちゃいちゃしないっ」
 桜の声が部室に響く。
「別にしてないだろっ」
 見慣れた風景に柚莉花はくすくすと声を上げて笑う。
 さっきまで人の髪を弄んでいたのは、そう取られても仕方ない行為ですよねと心で思いながら。 
 文化祭が終わってからも、こうして演劇部の部室に寄ることが多くなった。
 智博と一緒に帰るためでもあったのだが、いつの間にか演劇の脚本について蒼と意見を交わしているうちに、演劇部の一員と見なされているようだ。
「羨ましかったら、さっさと彼氏でも作るんだな」
「そ、そんなんじゃないもんっっ」
 智博のチラッと蒼を見る視線に、動揺したように桜が言い返す。
 蒼はコレといって反応なし。
 桜の想いはバレバレだと思うけど、気付いているのかいないのか……。
「て、言ってますが、羽野くんはどう思ってるの?」
 やっぱり気になったので二人に聞こえないよう小声で聞いてみる。
< 21 / 23 >

この作品をシェア

pagetop