ヴェロニカは女王一年生!
プロローグ
 南に広い海、北には険しい山脈をいただく小国リーカ王国。
 そこの王妃・セレスティナが内乱の犠牲になって亡くなって1年以上が経った。
 少しずつ王家も民も傷は癒えてきているが、大問題がある。当時の国王が責任を取るという形で上皇になってしまったため、玉座が空なのだ。
 リーカ国は、玉座が空の状態のまま1年経とうとしている。
 なぜ、玉座が空なのか。
 まず、王位継承権第一位である第一王女のヴェロニカ。年齢もキャリアも十分なのだが、まだ独身であるため即位条件を満たしていない。
 継承権第二位の第一王子のテオフィオは玉座につくにはまだ幼い。
 そのため、ヴェロニカが『仮の女王』として日々忙しく働いている。

 忙しいと言っても、お転婆で鳴らしたヴェロニカ、自然と『武』に偏ってしまう。
 先日は隣国・リッサンカルアを、同盟国・新ブレータニアン帝国が攻めるというので、三万の兵を援軍として派遣した。よく鍛えられて士気も高いその軍を率いたのはなんとヴェロニカ自らだった。
「さあ、行くわよ!」
 その一言で、出征が決まったというが、誰も驚きはしない。
 新ブレータニアン帝国は建国して日が浅いが、リーカ国とは固い絆で結ばれている国だ。ヴェロニカが援軍を出さないはずがないのだ。
 だが、まさか多忙なヴェロニカが軍を率いるとはだれも思っていなかった。
「おい、あれはヴェロニカさまじゃないか?」
「なに? 王女は仮の王としての執務が多忙だから戦には来られないって話だっただろ……?」
「内乱を経て逞しくなられたフィオさまが大将だと思ってたぜ」
 だが、サーモンピンクのドレスを纏って特殊な武器・棍を振り回す『女将軍』がこの世に何人もいるとは思えない。
 それに、白い詰襟を着たイケメンお付き武官――この国で一番過酷な仕事は王女のおつき武官だと噂されている――がぴったりついている。
 兵たちは、喜んだ。
「マイクさまも一緒だぞ。間違いなくヴェロニカさまだ! ご本人だぞ!」
「よっしゃ、おれ、頑張っちゃう!」
「新・ブレータニアン帝国って、マイクさまの弟が王様になったんだろ? てことは、うちの親戚ってことだな!」
「そうそう!」
 新・ブレータニアン王ヘンリー一世のために頑張るぞー、と兵があっという間に盛り上がった。
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