たった一つの勘違いなら。
ピンポーン、とインターホンが鳴る。何度か鳴るからまた警察かと出ると、恵理花だった。オートロックは開けてしまったが、玄関は開けずに応対する。

「差し入れ持ってきたから開けて」

「ありがとう、でも移るから」

「何言ってんの、開けなさい」

往生際悪くチェーンをかけて開けたけれど、もちろん散乱した破片は隠しようがなかった。



「開けて。詩織」

閉められないように靴の先をドアの隙間に挟んで恵理花が言う。

「移るから帰って」

「今開けなかったら、絶交する」

絶交って。子供?

「足引いて……開けるから」


入ってきた恵理花は、無言で惨状をしばらく眺めた後「悪いけど靴で入る」とヒールのまま上がり込んできた。

「何日分か服詰めよう。バッグどこ?」

「なに言ってるの」

「開けるよ」

勝手にクローゼットを開けて、勝手に棚の上の大型バッグを出し、洋服から下着まで適当にどんどん詰め込んで行くのを、あっけにとられて見つめた。

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