たった一つの勘違いなら。
統合ソリューション本部の方とのお仕事も時々あるけれど、課長の二課は海外案件を持っていなかったと思う。

それも無理そうです、という言葉は、手を取られた衝撃で消えた。

手をつなぐのはありですとは言ったけど、予想以上にドキドキしてくる。男の人と手をつなぐなんて何年振り? ……7年?……我ながらすごい。

ぎこちなさを何かからかわれるんだろうなと思ったけれど、課長はなぜかそのまま無言だった。

つながれた右手にばかり意識が行って困る。



何か別のことを考えようとして、カズくんとは手をつなぐんだろうかと一瞬想像してから、強制的に頭から追い出した。

興味本位で妄想することをとがめられたことで、さすがにカズくんと課長のことを考えるのをやめようとしてる。

されて気持ちのいいものじゃないはずだ。カズくんのことは、暗黙の了解としてもうお互いに言及しないようにしていた。

課長は『全然彼女っぽくなってない』って言うけど、そうじゃないと思う。

気を張ってないと本当の彼女になったような気がしてしまうくらいに、この人は女性への対応が優しい。適度にリラックスさせ、急にドキドキさせる。

もちろんわざとやってるんだろうけど、少し自覚が足りてないと思う、ご自分の魅力に。
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