たった一つの勘違いなら。
4章 仕事の真冬



新年が明けたばかりの、なんとなく新しいことが始まりそうな空気がまだ消えない頃。仕事関係で新しくやって来たのはちょっと意外な人たちだった。


「橋本さーん、ちょっといい?」

加納さんに遠くから呼ばれて打ち合わせコーナーに行くと、4人掛けのテーブルの1つ空いた席に促された。

向かいには、ソリューションの二課の高橋くんと西山さん。

挨拶すると「面識あるんだったら話が早いね」と言うことになる。二課で、台湾との取引が発生するという話だった。

「小さい案件なんで西山に任せられるかと思っていて。橋本が海外担当だっていうからお願いしたいなと」

秋に二課に来たばかりの高橋くんの方が立場的には上ということは、西山さんは私たちの年下なのか。

「西山さんは海外契約のご経験が?」

「いえ、全く。すみません」

「橋本さん、いろいろ頼んでて悪いんだけどちょっと見てあげてくれる? 新しい人に教えて気づくことも役に立つだろうし」

加納さんが言うのは説明会の件だろう。こないだアドバイスをもらってから、いつもとは多少違うやり方を試したいと話はしてあった。

「わかりました。今少しお時間ありますか?」

「はい、よろしくお願いします」
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