たった一つの勘違いなら。



そのまま忘れようと思ったあの人のことは、翌日真吾さんの家ですぐに思い出すことになった。

「詩織が全然聞いてこないから、この際俺から話したいんだけどいいかな」

「はい」

聞いてこないってお見合いの噂のことかな。いつもより堅くなった様子の真吾さんに釣られて、私も隣でソファに座る姿勢を正した。

「あいつとは別になんでもないんだ。詩織が想像しているような関係じゃない」

あいつ? ああ、あの彼女のことか。真吾さんの方にも何か言いに言ったんだろう。

「私から聞くようなことでもないですし、別になにがあっても気にしてませんけど」

「今さら信じられない?」

真吾さんには珍しいどこか弱気な表情で聞かれるけれど、信じるもなにも。もしあの人があの雰囲気でなんにもない人ならば、私などなんでもなさすぎる。

「私は別に偽物ですからいいですけど、関係を持った方を『なんでもない』って言い切るのは不誠実だと思います」

「だから、持ってないんだよ。単にからかってただけというか」

そこまで言い張るのに驚く。口が上手い、飽きっぽいに続く欠点。時々嘘つき?

でもまさか彼女が一方的に思い込んでいるとか。ストーカー的なことだとか。
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