偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「……もしもし、栞?」

タップしてLINE通話に出る。

『おねえちゃん、今、大丈夫?』

「大丈夫やけど、どしたん?」

稍に方言が出る。

『あのなぁ……おとうさんが……』

一拍、間が空いた。

『……再婚する、って言うてはる』

稍と栞の両親は長年別居していたが、昨年ようやく離婚した。それに伴って、稍も栞も母親の旧姓を名乗るようになった。

「ん……おとうさんかってまだ五十代やし、長いこと別居してはったし、仕方(しゃあ)ないんとちゃう?
……栞ちゃんは反対なん?」

大学を卒業して東京の会社に就職するまで稍は実家で父と栞と三人で住んでいた。
だが、栞はこの春大学院の博士課程を修了しても、実家で父と暮らしていたはずだ。

……あ、新しい「奥さん」と一緒に住むんがイヤなんやろうか。

『あんなぁ……再婚する相手がなぁ……結花(ゆか)やねん』

「……は?」

稍の知る「結花」はただ一人である。
栞の、小学生の頃からの親友だ。

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