偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


おでこに冷えピタを貼られた稍は寝室のベッドで寝かされていた。

しこたま強い酒を呑んだあとに、バスルームで「あんなこと」をさせられたのだ。
のぼせないわけがない。

「稍……悪い。ごめんな」

さすがの智史も「反省」して謝った。

身体(からだ)中を火照(ほて)らせて、熱い息を吐く稍を腕枕して、その髪を優しくやさしく、撫でている。

稍は先刻(さっき)から、なにやら譫言(うわごと)のようにつぶやいている。

智史は稍の口元に耳を寄せた。

「……す…き……やや……さとくんの…こと……だいすき……」

智史の切れ長の目が見開かれる。

「……やや……さとくんの…ため…やったら……なんでも……する……」

智史の鉄仮面と呼ばれる無機質な表情が、跡形もなく完全に崩れた。

「稍……実は、神戸でな……」

そう言いかけて、やっぱり稍にちゃんと意識があるときに言おう、と思い直した。

そして、智史は自身の左手で稍の左手をそっと握った。

二人の薬指には、互いにつけ合って「誓いのキス」をしたあの日からずっと、ティファニーのハーモニーがあった。

< 530 / 606 >

この作品をシェア

pagetop