偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「ママのところに寄ってるヒマはないからなっ!」
魚住は、ひきつけを起こしそうなほど号泣する息子を米俵のように担ぎ直し、
韋駄天か⁉︎
走れメロスか⁉︎
スーホの白い馬か⁉︎
という勢いで、トイレを目指して広い会場を飛び出して行った。
招待客はもちろん、乾杯のためにドリンクを配るウェイターたちも、何事かと振り返っている。
しかし、そんなことには構っていられない。息子の「一大事」なのである。
学生時代サッカー部だった魚住は身体能力の高さを求められるGKで、当時はゴールを死守するポジションだった。
だが、今はただ、かわいい一人息子のために、わが身の持てる長い脚を最大限に駆使し、トイレという「ゴール」を目指して……
……ひたすら疾走した。