君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。

『…なら、よかった』

ほっと息をついて安堵する俺に彼女は微笑みかけて、ありがとうと呟く。

それに首を傾げても『ううん』と首を横に振るだけだった。


最寄りに着いて、席を立った俺に少し寂しそうな顔をするからそれが嬉しくて、髪を優しく撫でた。

『またな、逢』

遠ざかる赤いバスを見えなくなるまで見送って、それからオレンジと紫の混じった空を見上げる。


やっぱ、俺…逢のこと好きだなぁ。

ゆっくり、だけど着実に育っていった気持ちは大きく膨れ上がって“恋”というものになった。

前の世界の俺の毎日には逢がいて、きっと逢の毎日にも俺がいたんだろうね。

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