BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「もう五時!」

 携帯を再びポケットに入れると、松葉づえをついてカウンセリングルームへ引き返す。

 その道々、デイルームを横切ったときに、たまたま目がいった。

 六つあるテーブルの内、ふたつほど入院患者が使用していた。
 どちらも年配の入院患者で、片方は見舞客と一緒で、話に花が咲いている様子だ。
 何気なく、もう一方の席にいた患者に視線を移すと、ひとりでテレビを眺めていた。

 月穂はその患者につられ、テレビの液晶に目線を向ける。

 画面の右上には、LIVEという文字があり、風の雑音とともに真剣な顔をしているアナウンサーがスタジオからのコメントに何度か頷いていた。
 その表情や声に、楽しいニュースではないことは一目瞭然。

 月穂はなんだか気になって、つい足を止めた。
 デイルームから一歩出たところからでは、遠くて文字が見えづらい。テレビ自体が大きいものではないから余計だ。

 目を凝らしてジッと見ていると、画面がパッと切り替わる。その光景に、心臓がドクンと嫌な音を上げた。

『こちらは、現在の成田国際空港です』

 アナウンサーの言葉に、さらに動悸が増す。

『フランクフルト発のUAL航空機が、着陸直前にエンジンから出火し、現在も消火活動を行っています』
< 118 / 166 >

この作品をシェア

pagetop