BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「そばにいすぎて、その魅力と大切さを忘れていたってことさ」

 夕貴なりに、色々と葛藤していたのだろう。

 意中の彼女が祥真を思っている。

 思えばこれまで、祥真からは劣等感を与えられることもあった。
 そんな感情が月穂をきっかけに溢れ出て、あの日、電話でひどい態度をとったし、卑怯なことをしてしまった。

 この五日間、フライト中でも気を抜けば祥真のことが頭を過っていた。
 その大切な友が事故に遭ったと知り、心底狼狽えた。

 同時に、自分の気持ちが明確になったのだろう。

 祥真は訝し気な顔で口を開く。

「いや、よく意味が……」
「無事でよかった」

 夕貴はやおら視線を上げると、清々しい顔でそう言った。そして微笑む。

「俺はお前が羨ましくて、ときどきむかつくって思うこともあったけど、やっぱり大事なんだよ」
「夕貴……」

 祥真が目を見開くと、その視界にメモ用紙が割り込んでくる。
 再び眉を寄せ、夕貴が差し出すメモにそっと指をかけた。

「これは大和さんの連絡先だ。本当は彼女から、お前に渡してほしいって頼まれていたんだ。連絡待ってるって」

 弾かれたようにメモから顔を上げる。

「俺が祥真に電話をかけたあの日、大和さんからお願いされていた。それを、俺がわざと伝えなかったんだ。ごめん」
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