BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「どのようなご用件でしょうか」
「単刀直入にお尋ねしますが、うちの大和と特別な関係ですか?」
「はい。それがなにか?」

 花田の顔から笑みが消え、真剣な面持ちで問われた質問に、祥真は間髪容れずあっさりと返す。
 月穂の上司が仕事外のことに首を突っ込んでくることに、戸惑いと反抗心を抱いた。

 もしも、月穂との関係に横槍を入れることを言われたなら、毅然と跳ね除けようと心の準備をした矢先だ。花田の気の抜けた笑い声が響く。

「ふふっ。驚いた。ああ、ごめんなさいね。多少狼狽えたりするものかと想像していたので」

 無防備に抱腹するものだから、祥真は毒気が抜け、唖然とした。

 花田はいったい自分になんの用なのか。
 見当もつかぬまま、ただ花田を呆然と見つめる。

「来週から、大和をまたこちらに戻す予定です」

 花田は急にきりっとした表情になったかと思えば、月穂の現状報告をした。

 それは初耳ではあったが、たったそれだけの用事のために、わざわざ時間を合わせてまでやってくるのはおかしいと不審に思う。

 すると、花田が近くの階段に目線をずらし、真顔で口を開く。

「先日、とある看護師が私と顔を合わせたときに、話題に困ったと言わんばかりに目を泳がせてこう言ったんです」

 突飛なことに、祥真は頭が追いつかない。
 しかし、話の全貌が見えないからこそ、祥真は真剣に耳を傾けた。

「大和さんの足の具合はどうですか? 階段から落ちたのは不運ですけど、すぐに助けてもらえて不幸中の幸いでしたね、って」
「それって……」
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