BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
そのとき、カーテン越しでもわかる閃光とともに、これまでで一番大きな音が月穂の言葉を遮った。そして、ふっと部屋の電気が消える。

「あー。停電か」

 祥真が冷静に言うなり、暗闇でガサッとなにかをまき散らす音がした。

「大和さん……?」

 祥真の呼びかけに月穂の反応はない。
 暗闇に目が慣れてきた祥真は、自分の足元で蹲る月穂に気がつく。

「もしかして……暗いのは苦手?」

 月穂は自分のカバンを蹴飛ばすほど動揺し、さっきの音は、部屋に月穂の私物が散らばったものだった。

 祥真は膝を折り、そっと月穂に両手を回す。

「俺、仕事中に何度か被雷を経験したことあるよ」

 温かな腕に包まれ、頭の上に落ちてくる祥真の声に、月穂は少し落ち着きを取り戻す。掠れ声で、静かに答えた。

「そう……なんですか」
「あれはやっぱり嫌なものだな」

 祥真の話に、月穂は自然と笑いが零れた。

「怖いわけじゃなく、嫌なだけなんですね。なんだか隼さんらしい」
「飛行機は、ある程度の落雷は大丈夫なように造られているから」

 部屋の灯りが消えた瞬間、祥真の存在を忘れてしまうほどパニックになった。
 しかし今、彼の体温を感じながら言葉を交わしていると、心が落ち着いていくのがわかる。

「隼さんの声って不思議ですね。あのロスへ経つ日の機内アナウンスでも、なんだか安心感があった」

 そう吐露する月穂は、苦手なはずの暗がりで顔を上げることができた。

 祥真の腕の中から、ふとカーテンの隙間から空を見る。同時に、青白い光が一面に広がった。

「……きれい」

 ぼうっとして、、無意識にそうつぶやく。

「あ。私また変なこと言っ……」

 祥真と一緒にいると、苦手なはずの暗闇への恐怖感がなくなり、そんなことを感じられるほど、心に余裕が生まれていた。

 月穂はおもむろに祥真に瞳を向ける。
 仄暗い中で、彼がずっと自分を見つめていることに気がついていた。

 雷の音に負けないくらい、心臓が激しく脈打つ。

 視線を交錯させ続け、ふたりは気づけばどちらからともなく唇を重ねていた。
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